オプションの勝率とパフォーマンス   (2004年12月13日)


売りか? 買いか?

オプションを売るのが良いか、買うのが良いかといった話題が、オプショントレーダーの間でよく持ち上がります。

株式投資や先物取引などの場合、売りか買いかという判断は、相場に対して弱気か強気かということに拠ります。
しかし、オプションの場合、売りと買いは全く異なる取引手法と言ってもよく、相場の動向だけで決まるものではありません。

では、オプション取引を行うなら、売りと買いのどちらが良いのでしょうか?

売りが有利な理由

米国の株券オプション市場では、取引されている全てのオプションの内、実際に権利行使が行われるのは17%に過ぎないという統計があります。
つまり、80%以上のオプションは権利行使されることなく、期限切れ(権利放棄)になるということです。

アウト・オブ・ザ・マネーのオプションが本質的価値を持つためには、相場が予想した方向に大きく変動する必要があるため、相場の動きを単純に5種類に分割して考えても、オプションの売り手が有利であることは明らかです。(※)
(※)
相場が、(1)買い手にとって有利な方向に大きく変動、(2)有利な方向に小さく変動、(3)横ばい、(4)不利な方向に小さく変動、(5)不利な方向に大きく変動という5種類の動きと考えたとき、売り手は(2)~(5)の4通りで利益を得られる。
さらに、相場状況やボラティリティに合わせて、ショート・ストラングルなどの戦略を用いて売りを行った場合、オプションの売りがもたらす勝率が9割以上になるということも、珍しいことではありません。

見落とされがちなパフォーマンス

筆者自身、オプションを始めて間もない頃は、その勝率の高さに惹かれて売りだけを行っていました。
しかし、1年を終えての勝率(利益を得た取引回数 / 総取引回数)が9割以上であったにも関わらす、パフォーマンス(獲得利益)はあまりパッとしないものでした。
売りの特性上、一回の負けが数回分(場合によっては数十回分)もの勝ちトレードの利益を消し去ってしまうというのが、その理由でした。

もちろん、私が未熟なだけで、オプションの売りだけで高いパフォーマンスを維持しているトレーダーもいることは事実です。
重要なことは、売りと買いの比較ではなく、勝率よりもパフォーマンスを重視すべきということだと思います。
一見当たり前のことのようですが、勝率にばかり気をとられ、肝心のパフォーマンスを見落しているトレーダーは意外と多いのです。

オプション買いで勝率ダウン。 でも……

米国市場のオプションを取引するようになってからは、売りだけではなく買いも積極的に行うようになりました。
オプションの買いは、損で終わってしまう取引が多いこともあり、勝率は当然下がりました。
しかし、パフォーマンスは逆に上がったのです。

5回に1回しか勝てなくても、その1回の勝ちによって10回分の損失を補えるなら、長い目で見ればパフォーマンスは上昇するということに気が付きました。
ここで、オプションの買いを推奨している訳ではありません。
勝率よりもパフォーマンスを重視することの大切さを強調したいのです。

もちろん、オプションの売りだけでパフォーマンスを上げることも可能です。
そのためには、(1)マネーマネジメントを徹底する(大きすぎるポジションは持たない、損切りを厳密に行う)、(2)有利な時(高ボラティリティ時など)にのみ取引する、などが必要です。
つまり、オプションの売りによる利益は限定されているので、損失をできる限り小さく抑え、収益機会を増やすことによって、トータルでの収益を上げるという方法です。


新マーケットの魔術師(出版社: パンローリング)」に登場するウィリアム・エックハート氏は、トレードの勝率と収益について、次のように明確に結論付けています。
トレードの勝率は最も価値のない統計値で、パフォーマンスと逆行することさえある。

オプションの売りと買いはどちらが良いか? と聞かれた場合、機会に応じて、パフォーマンスが最大となるように両方行うのがベスト、というのが私の意見です。 う~ん、当然といえば当然……。
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