11.株の資産にまとめて保険を掛ける




■ ポートフォリオ全体を一括でヘッジする

前回は、プット・オプションを使って個別の株に保険を掛ける方法を学んだね。


株価が下がっても、プット・オプションを買っていれば保険の役割を果たしてくれるんだったね。


うむ。 では、複数の企業の株を保有していて、その全てに保険を掛けたい場合はどうすればいいだろう?


えーっと、それぞれの株に対して、プット・オプションを買えば良いんじゃない?


そうだね。 確かに、その方法でも株の資産をヘッジすることは出来る。


この方法だと、保有している株の数だけオプションを買わなくてはならず、取引に掛かる手数料が大きくなる。
全てのオプションを取引するためには多くの時間と労力も必要だね。


面倒だしお金が掛かるし、あまり良い保険じゃないかも。


実は、株式市場の暴落から株の資産を守るもっと良い方法がある。
それは株価指数オプションだ。

個別の株式オプションを取引する代わりに、株価指数オプションを使えば、取引の手間とコストを減らすことができる。


かぶかしすうおぷしょん?


そう。 株価指数オプションとは、複数の企業の株価を平均化することによって算出される「株価指数」を対象とするオプションのことだよ。

個別の株それぞれのプット・オプションを買う代わりに、株価指数のプット・オプションを買うことで、保有株全体に対してのヘッジ効果が得られる。


ほぉー。  株価指数には、複数の企業の株価が反映されている。
だから、株価指数のプット・オプションを買っておけば、自分が保有している株の全てが値下がりした場合でもヘッジになるってことか。

・・・って、でもチョット待った!
保有している株が値下がりした場合でも、株価指数が下がるとは限らないよね?

例えば、A社、B社、C社の株価が下がっても、株価指数に含まれる他の株が値上がりした場合、株価指数は逆に上昇して、ヘッジにならないんじゃない?


もちろん、そういうことも起こり得るよ。
株価指数のプット・オプションを買うことは、「大きな災害に備えての保険」と考えたほうが良いね。

ポートフォリオ(保有銘柄)が十分に分散されていて、それでも株価の下落によって壊滅的な打撃を受けるような場合、それは市場全体が暴落するような時でもある。 リーマンショック後の暴落などはその典型例だ。
そういうケースにこそ、株価指数のプット・オプションは大きなヘッジの役割を果たし、資産を守ってくれる。

一方、市場全体は安定していても、特定の銘柄だけ株価が下落することもある。
そのようなケースに備えて確実性を重視したい場合や、ポートフォリオが分散されていない場合は、個別株のプット・オプションを買った方が良いこともある。(特定業種の株しか保有していない等)
取引手数料や労力、確実性を考慮した上で、自分の投資スタイルに合った方を選ぶことが大切だ。


取引コストや手間が掛かっても良いなら、個別株のオプションでもいいかも。


それともう一つ、株式相場が暴落するような局面では、全く別の視点から株価指数オプションを取引することができる。 それはつまり、市場の暴落から大きな利益を得るためにプット・オプションを買うというケースだ。

この場合は株を保有せずに、シンプルに株価指数オプションのプット(なるべく満期までの期間が長いもの)を買えばいい。
例えば、リーマンショック以前に金融市場の問題点に気づき、株価指数オプションのプットを買っておいたトレーダーは、2008~09年にかけて巨額の利益を得ることができた。


ほほぉ。 株が暴落しても逆に利益を得ることができるんだ。
でも、それは株価が予想通りに下落したからだよね?

もし株価が下がらなかったら、プット・オプションは無価値になって損をすることになるんじゃない? それはすごく残念な気がするけど。


確かに、利益を得るためにプット・オプションを買ったトレーダーにとっては、株価が下がらなければ残念な結果ということになる。
しかし、株の保険のためにプットを買った投資家にとっては、必ずしも残念な結果とは言えないよ。

例えば、家に火災保険を掛けているときに、「家が火事で燃えなかったら、保険料が無駄になってしまって嫌だ!」と考える人はいないよね。
それと同じで、「保有している株が暴落しなかったら、プット・オプションが無価値になってしまって嫌だ!」と考えるのも、オカシイ話だよ。

保険のためのプット・オプションが無価値のまま期限切れになるということは、株の価値は上昇して(または横ばいで)、安泰ということを意味する。

実際、顧客から資金を預かって運用するファンド・マネージャーなどは、ヘッジのために買ったプット・オプションが無価値のままであるように、文字通り「願って」いるくらいだよ。


そっかー。 保険として考えるとその通りだ。
ところで、実際に取引されている株価指数オプションには、どんな種類があるの?


国内では日経225オプションが活発に取引されているよ。
ポートフォリオのヘッジ目的、そして暴落時の収益機会としても日経225オプションが最近注目されるようになっている。

米国市場では、数十種類の株価指数オプションが取引可能だが、特にS&P 500、Nasdaq 100、ダウ・ジョーンズ工業平均(DJIA)などの株価指数オプションが活発に取引されているよ。


なるほどねぇ。
株価指数オプションは市場全体を取引の対象にできるから、暴落時の保険や収益を得るための道具として使えるんだね。


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