商品先物取引における規制緩和と問題点

先月、国内の商品先物取引に関する「規制緩和方針」が経済産業省と農林水産省によって示されました。

日本の商品先物取引といえば、悪質な電話勧誘などで、常に消費者問題とは切り離せない存在でした。 しかし、2005年に施行された改正商品取引所法、および2011年からは勧誘を望まない顧客への電話や訪問での売り込み(不招請勧誘)が禁止されたことで、消費者被害は減少傾向にあります。

一方、商品先物の取引自体も年々減少しており、昨年の取引高はピーク時の2003年に比べて3分の1以下まで落ち込んでいます。
(参考:東京商品取引所 出来高の推移

そこで、取引の減少に歯止めをかけるために、規制を緩和して市場の活性化をしよう、というのが現在の流れです。

今回の規制緩和では、70歳未満の人にかぎり、リスクについての理解度を示す確認書が提出されれば、業者は不招請勧誘を行ってもOKという仕組みになります。

条件付きではあるものの、先物業者による「望まない勧誘」が合法化されることになり、消費者被害が再び広がらないかという懸念も残ります。

そもそも勧誘が規制されるようになったのは、強引なノルマ方式の勧誘によって顧客の利益が無視されるという、業者の体質・構造に問題があったからでした。 その体質が変わらなければ、規制緩和によって同じ問題が起こる可能性があります。

欧米の先物市場のように、十分な流動性の中で個人投資家が公平に取引できる市場になれるかどうか。 経済産業省は、「国際水準の商品先物市場としての地位を確立する」という目標を掲げていますが、まずは国内の投資家から必要とされる市場になることが不可欠だと思います。

参照: 経済産業省: 商品先物取引制度の改革について
中日新聞: 商品先物取引の規制緩和策に批判噴出