6.時間価値と本質的価値





オプションの基本については分かった?


オプションにはコール・オプションとプット・オプションがあって、コール・オプションはある物をある日時に買う権利、プット・オプションはある物をある日時に売る権利だったよね。
大体わかったよ。


オーケー。 では次に、オプションの価格(プレミアム)についてより深く理解するために、「時間価値と本質的価値」について覚えておこう!




■ イン・ザ・マネー 、アット・ザ・マネー、アウト・オブ・ザ・マネー
 (In the money、At the money、Out of the money)

まず、時間価値と本質的価値がどういうものかを理解するために、3種類のコール・オプションを見てみよう。
プット・オプションの場合は、コール・オプションの逆を考えればOKだ。


ITM,ATM,OTM
9月1日現在、株価が1,000円の株に対して、権利行使価格が900円、1,000円、1,100円という3種類のコール・オプションがあったとする。
期日は全て1ヵ月後の10月1日だ。

権利行使価格が900円のコール・オプションは、時価1,000円の株を900円で買える権利だから、すでに実質的な価値をもっていることになる。
このようなオプションをイン・ザ・マネーのオプションというよ。

また、イン・ザ・マネーのオプションが持っている価値は本質的価値と呼ばれる。
上の例では、権利行使価格900円のコール・オプションは100円の本質的価値を持っていることになる。


確かに、1,000円の株を900円で買う権利があれば、オプションの期日が来ていなくても、900円で買ってただちに1,000円で売ることができるから、100円の利益が得られるね。
これが本質的価値か。


そう。 本質的価値は、「オプションを権利行使して得られる利益」と覚えてもいいね。

次に、「権利行使価格 = 現在の原資産価格」となるオプションのことを、アット・ザ・マネーのオプションというよ。
上の例でいうと、権利行使価格1,000円のオプションがそれに当たる。
アット・ザ・マネーのオプションは、本質的価値を持っていない。


1,000円の株を1,000円で買っても利益は得られない。
だから本質的価値が無いってことか。


そして3つ目は、権利行使価格1,100円のコール・オプションだ。
このオプションは、株価が1,100円を超えるまでは実質的な価値を持たない。
このように、「権利行使価格が原資産価格の外側にあるオプション」のことをアウト・オブ・ザ・マネーのオプションというよ。

当然、アウト・オブ・ザ・マネーのオプションも、本質的価値を持っていない。

アット・ザ・マネーとアウト・オブ・ザ・マネーのオプションには、将来原資産の価格が変動してオプションに価値が生まれるかもしれないという期待感、つまり時間価値しかないという特徴がある。


■ 時価1,000円の株式に対するコール・オプション ~本質的価値と時間価値の関係

権利行使価格 分類 プレミアム
(オプション価格)
本質的価値 時間価値
(プレミアム - 本質的価値)
900円 イン・ザ・マネー 170円 100円
(1000 - 900)
70円
(170 - 100)
1000円 アット・ザ・マネー 100円 0円 100円
(100 - 0)
1100円 アウト・オブ・ザ・マネー 60円 0円 60円
(60 - 0)
コール・オプションの本質的価値は、現在の原資産価格から権利行使価格を引いた価格になる。 これがゼロ以下になるなら、そのオプションには本質的価値がなく、時間価値だけがあると見なされる。

プット・オプションの本質的価値は、逆に権利行使価格から原資産価格を引いた価格になるよ。

時間価値は、将来の価格変動によってオプションの価値が高まるかもしれないという期待感の値段だ。 当然、オプションの満期日までの時間が長ければ長いほど、時間価値は大きくなる。
■ 満期日までの期間が長いオプション
満期日までの時間が長いオプション
■ 満期日までの期間が短いオプション
満期日までの時間が短いオプション


満期が近づくにつれて、オプションに価値が生まれる期待感(=時間価値)が小さくなっていくんだね。


そう。 そして満期日には、オプションの時間価値はゼロになる。
次のグラフは、オプションの時間価値がどのように減少していくかを示したものだよ。
時間価値の減少(タイム・ディケイ)
最初はゆっくり減少していき、満期の直前になると急激に減少するという特徴を持つ。 このように、時間の経過とともにオプションの時間価値が小さくなることを、タイム・ディケイ(Time Decay)と呼んだりするよ。


うーんと、時間価値は最終的にはゼロになっちゃうんだよね?
ということは、オプションの満期日には、本質的価値だけが残るってこと?


そのとおりだ。

プレミアム = 本質的価値 + 時間価値

オプションのプレミアムこのように計算されるから、時間価値がゼロになる満期日には、本質的価値のみが残るということだね。 つまり、オプションの満期日にイン・ザ・マネーになっていないオプションは、価値がゼロになる。 (オプションの権利放棄)


なるほどねぇ。
でも、この時間価値ってやつが実際の取引にどう影響するのか、いまいちわからん。


例えば、自分がアウト・オブ・ザ・マネーのオプションを買った後に、相場が思うように動かない時には、時間価値が大きく減少する前に転売するという対応ができる。

逆に、自分がオプションを売った場合には、満期日が近づけば近づくほどオプションの価格がどんどん下がっていくから、時間価値の減少(タイム・ディケイ)が追い風になる。

タイム・ディケイは、オプションの買い手にとってはリスク要因、売り手にとってはうまく利用したいプラス要因になるよ。


ほほぅ。 買い手にとっても売り手にとっても、時間価値の減少は影響があるんだね。




■ 権利行使の方式について - アメリカン・タイプとヨーロピアン・タイプ

さて、時間価値の話のついでに、権利行使の方式について説明しよう。
権利行使には、オプションの満期前であればいつでも権利行使ができる「アメリカン・タイプ」と、満期日にのみ権利行使ができる「ヨーロピアン・タイプ」がある。
アメリカン・タイプとヨーロピアン・タイプ


権利行使のやり方には2種類あるのか。
トレーダーにとってはどっちが有利なの?


アメリカン・タイプのオプションは、いつでも権利行使ができるということがオプションの買い手にとっては利点となる。
その代わりに、オプションのプレミアムがヨーロピアン・タイプよりも割高になるという特徴があるから、一概にどちらが有利とは言いにくいね。

日本国内では、日経225オプションなどの指数オプションではヨーロピアン・タイプを採用していて、先物オプションではアメリカン・タイプを採用している。
米国のオプション市場では、株式オプションや一部の指数オプション、そして先物オプションなどでアメリカン・タイプが使われているよ。

自分が取引しようとしているオプションがどちらの権利行使タイプを採用しているのか、事前に確認しておくことが大切だ。


事前に契約内容の確認を! ってやつだね。 気をつけよっと。


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