エキゾチックオプション その1   (2004年10月20日)


特殊ルールのオプション

オプションには、「エキゾチックオプション」という一風変わったものがあります。
エキゾチックオプションというのは、通常のオプション取引に特殊ルールを加えたオプションのことです。

エキゾチックオプションと区別するために、通常のオプションのことを特にバニラオプション(Vanilla Option)と呼ぶこともあります。
オプション道場で解説しているオプションや、現在日本やアメリカで取引されているほとんどのオプションはバニラオプションということになります。
一般に「オプション」とだけ言う場合、バニラオプションのことを指します。
オプションの種類 - 体系図

バニラオプション (普通のオプション)

エキゾチックオプション

バリアーオプション

ノックアウトオプション

ノックインオプション

バイナリーオプション

キャッシュ・オア・ナッシング

アセット・オア・ナッシング

エキゾチックオプションの代表的なものには、バリアーオプション(Barrier Option)とバイナリーオプション(Binary Option)があります。

バリアーオプションには2種類あり、一つはノックアウトオプション(Knock-out Option)と呼ばれるもので、もう一つはノックインオプション(Knock-in Option)というものです。

バイナリーオプションにも2種類あり、一つ目はキャッシュ・オア・ナッシング(Cash-or-nothing)、もう一つはアセット・オア・ナッシング(Asset-or-nothing)です。

特殊ルールってどんなもの?

バリアーオプションの仲間である「ノックアウトオプション」、および「ノックインオプション」の仕組みについて簡単に説明します。
ノックアウトオプションとは、原資産の価格がある一定価格(バリアー)に達すると、即座に無効となるオプションのことです。
ノックインオプションとは、原資産の価格がある一定価格(バリアー)に達しないと、有効にならないオプションのことです。

例えば、権利行使価格150円、バリアー価格200円のノックアウト・コールオプションを買ったとします。
オプションの満期日に、原資産の価格が150円から200円の間にある場合、このオプションは本質的価値を持つことになります。
しかし、原資産価格が予想以上に大きく値上がりし、200円を超えた場合、その時点でこのオプションはただちに期限切れ(無効)となってしまいます。

次に、権利行使価格150円、バリアー価格200円のノックイン・コールオプションについて考えてみましょう。
ノックインオプションの場合、たとえ満期日にオプションがイン・ザ・マネーになっていたとしても、原資産価格がバリアー価格を超えない限り有効になりません。
したがって、この場合は原資産価格が満期日までに200円を超え、なおかつ満期日の時点で原資産価格が150円以上に留まっていれば、オプションは本質的価値を持つことになります。

このように、普通のオプションに「特殊ルール」を加えたものがエキゾチックオプションです。

エキゾチックオプションが取引できる市場は?

エキゾチックオプションは、通貨オプション市場、および一部の証券、先物、債権市場などで取引可能です。

通貨のエキゾチックオプション取引は、銀行や企業間では活発に取引されていますが、一般の個人投資家向けではありません。  (筆者のシンタローも、エキゾチックオプションをトレードしたことはありません。)
オプション先進国のアメリカでも、エキゾチックオプションの取引は通貨市場以外ではあまり普及しておらず、株券オプションや先物オプションの市場ではまだほとんど取引が行われていません。  (一般の投資家が取引できる環境にはなっていません。)

しかし、専門家の予想によると、今後エキゾチックオプションは株券オプションや先物オプションの市場にも浸透するだろうという見方が強いです。
(追記)
2014年現在、米国市場の一部でバイナリーオプションが取引可能になっています。 また日本ではFX市場において、業者との「相対取引」によるバイナリーオプションが取引されています。
オプションだけでも複雑なのに、さらに複雑なエキゾチックオプションが今後普及するかどうかは正直分かりません。
ただ一つ言えることは、それを知る投資家にとって、エキゾチックオプションは「更に少ないリスクで更に多くの利益を得るための手段」になる可能性を秘めていることです。

日本市場では、残念ながら普通のオプション取引でさえほとんど普及しておらず、トレード対象は日経225オプションに限られているという状況です。
投資家を「顧客」と考え、次々に新しい金融商品を開発していく海外市場を尻目に、日本市場は時代に取り残されてしまうかもしれません。
もちろん、新しい金融商品が全て良いものという保障はありませんが、より良い商品を市場に送り出そうという努力がなければ、進歩もまたありません。

まずは日本の証券会社が、投資家の教育も含め、株券オプション取引を積極的に取り扱うことが第一歩になると思います。
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