進化する指数オプション   (2005年4月23日)


投資家心理を指数化した“VIX”

アメリカの証券市場には、CBOEボラティリティ指数(CBOE Volatility Index)というユニークな指数があります。
CBOEボラティリティ指数とは、1993年にシカゴ・オプション取引所(CBOE)が考案したもので、市場に対する投資家の恐怖心を反映する指数と言われています。
一般的には「VIX」というシンボル名で呼ばれることが多いです。

投資家の恐怖心を反映するといっても、投資家1000人にアンケートを行って指数にしているわけではありません。
VIXの値は、S&P 500指数 (アメリカ市場の代表的な株価指数)のオプション価格をもとに算出します。
取引されているオプションの価格が高い水準の時にVIX値は高くなり、逆にオプションの価格が低い水準の時はVIXが低くなります。

一般に、オプションの価格は市場が上昇している時よりも、下降している時の方が高値になりやすくなります。 したがって、VIX値は市場の先行きについて投資家が悲観的な見方をしている時に高くなります。
これが、VIXが投資家の恐怖心を表す指標と呼ばれている理由です。

VIXは、米国の株式市場全体のインプライド・ボラティリティを指数化した物ともいえます。
マーケットは、しばしば投資家の感情によって大きく変動するので、株式市場の今後の動向を予測するための指標として、VIXの水準やトレンドを分析するアナリストもいます。

そして、それだけではありません。
シカゴ・オプション取引所には、このVIXの変動を利用した先物取引も上場されています。
VIXの先物取引は、S&P 500指数から派生したオプションの、そこからまた派生した金融商品ということになります。 つまり、デリバティブのさらにデリバティブです。

VIXのオプションが登場

さらに、これで終わりではありません。

2005年4月22日には、VIXのオプションがシカゴ・オプション取引所に上場となり、取引がスタートしました。
投資家心理を反映するVIX指数の変動を利用し、そのオプションが取引できるようになったということです。
今後、マーケットに対する投資家心理が悪化しそうだと思ったらVIXのコール・オプションを買い、投資家心理が落ち着きそうだと思ったらVIXのプット・オプションを買うといった取引が出来るのです。

ちょっとややこしいので、VIXオプションの成り立ちを整理してみましょう。
S&P 500指数
↓(派生)

S&P 500オプション
↓(派生)

VIX (CBOEボラティリティ指数)
↓(派生)

VIX先物取引VIXオプション
ある原資産(S&P 500指数)のオプションから新たな指数を作り、さらにその指数に対するオプションが取引されています。

VIXオプションを初めて知ったときは、大きな衝撃を受けました。
理論的には、オプション → 指数 → オプション → 指数 …というふうに、金融派生商品を無限に増やしていくことも可能なのです。

しかし、個人的にはあまり複雑なオプションを取引したいとは思いません。  もし、VIXオプションからさらに新しい指数を作り、そこからまたオプションを作ったとしたら、もはやオプション価格を動かしている要因が何であるのか、直感的には理解できないと思います。
やはり、VIXオプションがギリギリの派生レベルという気がします。


シカゴ・オプション取引所が新しいオプション商品を次々に開発しているのは、1日200万枚という取引量を誇る米国市場のオプショントレーダーのニーズがあってこそです。
一方で、日本のオプショントレーダーも着実に増えてきており、国内の証券取引所もデリバティブ商品の開発に力を入れ始めています。
デリバティブは、アイディアさえあれば元手がほとんどいらずに作れてしまう商品なので、取引所にとっても魅力的な商品なのです。

とはいえ、アメリカのオプション市場は日本よりも20年は進んでいると思います。  マーケットに斬新なアイディアを注ぎ込むアメリカ人のフロンティア精神は、まったく恐るべしです。

参考リンク
 CBOE VIX紹介ページ
 CBOE VIXオプション導入のお知らせ
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