投資とトレードとギャンブル   (2004年12月28日)


ギャンブルの意味

オプショントレードはギャンブルでしょうか?
Noであり、Yesでもあると思います。

ある著名なトレーダーは、次のような言葉を残しています。
ギャンブルとは、勝てる見込みがない時にお金をつぎ込むことである。

オプショントレードにおいても、勝てる見込みが無い取引というのは存在します。
例えば、満期の直前にアウト・オブ・ザ・マネーのオプションを買うことなどは、よほどの理由が無い限りギャンブルと言えます。

では、ギャンブルではないトレードとは何か? ということになります。
私が考えるギャンブルではないトレードは、次のようなものです。
勝てる可能性が高い時に、有利な戦略を使って、管理された適切な資金でトレードすること。

これは、投資対象がどんなものであっても当てはまると思います。
投資対象が何(What)かということよりも、それにどうやって(How)お金をつぎ込むかということが、ギャンブルかそうでないかを決める要因になるということです。
(例外として、宝くじや競馬のように、どんな方法でやってもギャンブルにしかならないような物も存在しますが……)

投資とトレード(投機)

企業の成長とともに株価が上昇することを期待し、長期的な視野で株を売買することを、一般に「投資」と呼びます。
一方、より短い期間の価格変動を利用して、短期的に株を売買することを「短期トレード」とか「スウィング」などと呼びます。

しかし、本質的には両方とも「トレード」です。
違いはただ一つ、長期的か短期的かということだけです。

トレードとは、「ある物の価格変動を利用して、買ったときと売ったときの差額で利益を得ようとする行為」のことを言います。
投資というのは、企業の設備投資や建設投資という言葉からも分かるとおり、「収益(キャッシュフロー)を得るために、資金を投下する行為」です。

つまり、自分のことを投資家だと思っている人の大部分は、厳密に言うとトレーダーということになります。
分析方法がファンダメンタルかテクニカルかといったことや、売買が長期的か短期的かといったことは関係なく、将来売ることを目的として株を買うことはトレードなのです
唯一、配当を目的として、株を保有するために買う場合、これは投資になります。

ところで、「投機」という言葉は、一般にギャンブル的な行為を指す場合が多いですが、投機にはもう一つ意味があります。
とうき 【投機】
(1)〔speculation〕
(ア)偶然の利益をねらって行う行為。
(イ)将来の価格変動を予想して、価格差から生ずる利益を得ることを目的として行う売買取引。
三省堂提供「大辞林 第二版」より
(イ)の意味で使う場合は、「投機 = トレード」ということになります。
よくニュースなどで、「ニューヨークの投機家が・・」といったフレーズを聞く時、なんとなく無謀なことをしている人達をイメージしてしまいますが、実際は売買によって利益を得ることを目的としている「トレーダー」のことを指しています。
この中には、顧客のために資金を運用するファンドマネージャーや、大手ヘッジファンドのトレーダー等も含まれます。

ギャンブル的な売買

長期的な売買を専門にしている人は、短期トレードのことを「ギャンブル」と呼ぶことがあるようです。
これは、すでに書いた理由から全くの見当違いということが分かります。

ギャンブルというのは長期、短期に関わらず、「どうやって売買するか」ということで決まります。

損が出ている株を長期的に保有し、いつか上がるだろうと期待していることは、短期売買よりもずっとリスクが高いギャンブルです。
また、短期売買においても、許容できない額の損失が出る可能性がある売買を行うことは、ギャンブル的です。
1つのトレードが短期的か長期的かに関わらず、長い目で見て利益を得るための戦略と資金管理が、ギャンブルではないトレードには必要と言えます。

株であってもオプションであっても、自分のやっていることが「投資」なのか、「トレード」なのか、あるいは「ギャンブル」なのか、しっかり理解しておくことが大切ではないかと考えます。
(日本語の「投機」には、トレードとギャンブルの両方の意味があるので、注意して使う必要があります。)


[補足]
オプション道場では「投資」「トレード」という言葉を、それほど厳密に区別して使っておらず、一般に通じやすいと判断した方を使用しています。
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