7.カバード・オプション




■ 原資産とオプションの組み合わせ

ここまでは、オプションのみを売買する場合を考えてきた。
今回は、原資産とオプションを組み合わせて売買し、利益を得る方法を説明するよ。


原資産とオプションを組み合わせるって、いまいちピンとこないけど。


資金がある程度必要だけど、これはオプションの有効な使い方の1つで、事実上ノーリスクで利益を得ることも可能なんだ。
これは具体的な売買を見たほうが分かりやすい。
今回は、実際の相場を使って解説しよう。




1.プット・オプションを売る

まずオプションの対象となる原資産を決めよう。
ここでは、アメリカのNasdaq市場に上場している、Research In Motionという企業の株を選ぶことにした。
株価チャート


おー、本物の会社だ。


うむ。
そして、トレーダーはまず、この株のプット・オプションを売ることから始める。
このとき、10月4日が満期日で、権利行使価格が55ドルのプット・オプションが2.75ドルのプレミアムを付けていた。

ここで、現実的な取引を考えるために、オプションは100株で1セットとして考える。
これはどういうことかと言うと、アメリカでは100株に対するオプションが1つの売買単位になっているんだ。


そうなの? 確かアメリカでは1株単位から投資ができるって聞いたけど。


1株単位で取引できるのは、株式そのものを取引するときだよ。
オプションの場合は、100株単位で1セット(1枚)という取引単位になる。

この例では、権利行使価格55ドルのプット・オプションを10枚売ることを考えよう。
このオプションのプレミアムは2.75ドルを付けていたので、トレーダーの受け取りプレミアムは、(2.75ドル × 100株 × 10枚)で、2,750ドルだ。

この取引をまとめると下図のようになる。


プット・オプションの売り
この取引の時点では、オプションはまだアウト・オブ・ザ・マネーになってる。


そうだね。 株価が55ドルを下回らない限り、このプット・オプションはアウト・オブ・ザ・マネー ということになる。

ではまず、1つ目のケースを考えてみよう!
もし、株価が55ドルを下回ることなく、期日の10月4日になった場合はどうなるだろう?


えーっと、期日にはオプションの価値がなくなるから、オプションの買い手は権利放棄するんだよね。


そういうことになる。
このオプションを売ったトレーダーは、受け取りプレミアムの2,750ドルがそのまま利益になるよ。 過去3ヶ月の株価やトレンドを見る限り、そうなる可能性はかなり高いといえるね。(※)
アメリカの株券オプションは、期日前であればいつでも権利行使できる「アメリカン・タイプ」です。


では、ケースその2!
期日前に株価が55ドルを下回り、オプションの買い手に権利行使されてしまった場合を考えてみよう。


最初に1000株分のプット・オプションを売ったんだよね。
そうなると、1株あたり55ドルで、1000株買う義務が生じるから、
(55ドル × 1000株)で55,000ドルの損失ということ? ヒャー!


そのとおり。 確かにこのトレーダーは、1株あたり55ドルで1000株を買わなくては いけなくなる。
でも、これは必ずしも損失といえるだろうか?


??




2.権利行使価格で株を買う

このプット・オプションを売ったトレーダーが、はじめからこの企業の株を買うつもりだったとしたらどうだろう?


プット・オプションの売り2
うーん。 もともと55ドルで買いたいと思っていたなら、権利行使されて55ドルで買うことになってもいいかもしれない。


さらにこのトレーダーは、最初にプット・オプションを売ったことによって、1株あたり2.75ドルのプレミアムを受け取っているのを覚えてるよね。
つまり、55ドルで権利行使をされた場合でも、実質的には 55ドル - 2.75ドルとなり、1株あたり52.25ドルで買えたことになる。

これは過去3ヶ月の株価水準から見てもかなり安い価格であるし、このトレーダーは何の不満も持たないだろうね。 もともとは1株55ドルになったら買いたいと思っていたんだから。


うおぉー! 普通に株を買うよりも得だ!




3.さらにコール・オプションを売って儲ける

まだこれで終わりじゃない。


まだあるの?


まだある。
トレーダーは、Research In Motion社の株を1000株購入した後、さらにこの株のコール・オプションを売って利益を得ることができる。

たとえば、この株の株価は、その後50ドルくらいまで下がるかもしれない。
もしそうなったら、トレーダーは権利行使価格55ドルのコール・オプションを10枚売って、プレミアムを受け取れば良いだろうね。
これで、株価が上がっても下がっても横ばいでも利益を得られるポジションの完成だ。


えー、どうしてそうなるのか分からないんだけど。


まず、株価が下がるか、横ばいのままだったとすると、売ったコール・オプションの価値は無くなるから、コール・オプションを売ったときの受け取りプレミアムがそのまま利益となる。
その後、また同じようにアウト・オブ・ザ・マネーのコール・オプションを10枚売ることができる。 これを権利行使されるまで繰り返し行えばいい。

株価が55ドルを超えて上昇した場合は、コール・オプションの買い手が権利行使を行うことになる。
この場合、トレーダーは売り手に対して、1株あたり55ドルで1000株を売却しなければならない。

しかし、トレーダーは実質的にこの株を1株あたり52.25ドルで買ったのだから、55ドルで売れば売却益を得られるね。
この時の売却益は、(55ドル - 52.25ドル) × 1000株で、2,750ドルだ。
さらに、コール・オプションを売ったことによるプレミアムも受け取れるから、大満足の結果じゃないかな。 (下図)
カバード・オプションの損益


なるほど! 自分が所有している株に対してのコール・オプションを売れば、 たとえ権利行使されたとしてもリスクが無いんだね!


そういうことだよ。
このように、原資産を所有しながら取引するオプションのことを、カバード・オプション(Covered Option)と呼ぶよ。
オプションの種類に応じて、カバード・コールとかカバード・プットという使い方もされる。

これに対して、原資産を持たずにオプションだけを売る場合、そのオプションのことをネイキッド・オプション(Naked Option)と呼ぶ。
ネイキッド・オプションは、日本語では「裸のオプション」と言ったりもする。
直訳だね。


この例では、トレーダーが株のカバード・コールを売ったということか。




■ カバード・オプションのまとめ

さて、この取引をあらためて考えてみよう。
トレーダーは、最初に自分が買いたい株のプット・オプションを売ることによって取引を始めた。

そして、このときすでに、今後株価が上がっても下がってもトレードに勝てるような戦略を、オプションによって得ているんだ。


それってすごくない?
一般的な投資家が、株が上がるか下がるかで一喜一憂してる中で、オプションを上手く使えば相場に関係なく勝てるなんて。


一つ注意が必要なのは、今回のトレードの例では、トレーダーが投資資金として株を買う資金(55,000ドル)を持っていなくてはならないということ。
それから、株価が短期間で50%下落するといったような暴落が起こった場合には、トータルで損をしてしまう可能性もあるから、全くのノーリスクということではない。

しかし、取引を行った時点で勝つ可能性が非常に高いトレードであることは事実だね。

今まで普通の株式投資の価値観しかない人に、こういったオプションの利点を説明しても、なかなか理解しにくい場合があるのも確かなんだ。
オプション関連の本もいろいろと出ているから、読んで確かめてみるのも良いかもしれないね。


なるほどね。 ちょっと自分でも勉強してみようかな。
なんて言うだけ言ってみたり。


言うだけかよ。




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